症状別

1979年にWHOが鍼灸治療の適応疾患を発表して以来、アメリカ国立衛生研究所が鍼治療の有効性に関する声明を発表するなど世界的に認められるようになりました。

鍼灸治療に適応する疾患は以下の通りです。

Ⅰ.神経系疾患

神経痛

神経麻痺

痙攣

脳梗塞後遺症

自律神経失調症

頭痛(緊張型頭痛・片頭痛・群発型頭痛)

めまい

肋間神経痛

三叉神経痛

片麻痺

ヘルペス

パーキンソン病

帯状疱疹後神経痛

重症筋無力症

 

○頭痛
・緊張型頭痛

両側後頭部から項部にかけて、締め付けられるような鈍痛がみられます。
症状は徐々に強くなり、比較的長く、不安やストレスに関連します。

また、肩こりに伴った頭痛もこちらに該当することが多いです。

・片頭痛
女性によくみられます。
片側性で、脈を打つような拍動する感覚が何度も繰り返されます。
また前兆として閃輝暗点がみられることがあります。
*閃輝暗点(せんきあんてん): 「チカチカ」「キラキラ」した光が見えてしまい、視野が狭くなったり、ものが歪んで見えたりする

・群発頭痛
男性によくみられます。
片側性で、目の奥に激しい痛み(目をめぐられるような痛み)を感じます。

発症後は、数日から数週間集中的に痛みを自覚します。

東洋医学では,頭痛はストレスや過労で「気」や「血」の巡りが悪くなる,胃腸のはたらきが弱り身体に余分な「水」がたまるなど,様々な要因で引き起こされると考えられています。治療は,上記で述べた原因に対し、体質改善を目的に全身治療を行い,症状の改善を図ります。
予防・緩和のワンポイントアドバイス:
・緊張型頭痛

入浴や蒸しタオルなどで首や肩周辺を温め,筋肉の緊張をほぐしましょう。また,ストレッチやマッサージも効果的です。

・片頭痛

血管を広げる入浴や運動,マッサージは厳禁です。シャワーなどで軽く済ませる程度にしましょう。痛む部分を冷やすと効果的です。

・群発頭痛

痛みを自覚している期間は,飲酒や喫煙は控えましょう。

※ 頭痛のレッドフラッグ(重症のサインとなる症状)

  • 突然の発症
  • 過去に経験がないほどの痛み
  • いつもと様子が異なる
  • 頻度と程度が増していく
    50歳以降に初めて頭痛を自覚
  • 神経脱落症状(言語障害や手足の麻痺など)や視力障害を有する
  • 癌や免疫不全の病態を有する者の頭痛
  • 精神症状を伴う者の頭痛
  • 発熱、項部硬直、髄膜刺激症状を有する
  • 息をこらえるなどで症状が増悪したり、体位により変化するもの以上に該当する場合は、医療機関の受診をお勧めします。

○パーキンソン病
難治性で進行性の中枢神経疾患です。
主症候は以下の4つになります。

  • 振戦(安静時振戦)
  • 無動(仮面様顔貌、小字症すくみ足歩行)
  • 固縮
  • 姿勢反射障害(前屈姿勢、歩行開始時第一歩が踏み出せない)
    また,自律神経症候や精神症候を伴います。東洋医学では、パーキンソン病の主な原因として陰虚風動があります。陰虚風動は肝腎陰虚が原因となって起こるものであり、手足の硬直の発生原因とも関連します。
    治療:鍼灸治療とお薬を併用して病気の進行を少しでも遅らせ,生活の質の向上を図ります。鍼灸治療により振戦抑制や筋硬直の緩解,歩行改善,自律神経障害の改善,抑うつの改善などが期待できます。

 

○めまい
安静時または運動時に自分の体と周囲空間の相互関係・位置関係が乱れていると感じ,不快感を伴った時に生じる異常知覚を言います。
鍼灸治療の適応となるめまいは,メニエール病およびメニエール症候群,発作性頭位眩暈症および頸性めまいです。また,脳血管障害(脳梗塞など)の前兆としても,めまいが生じます。その場合,めまい以外に下記の身体的症状が現れますので,早めの診察をお勧めします。

神経症状(手足・顔のしびれ感、複視、言語障害、嚥下障害、意識障害など)がある場合は、中枢性めまい(脳血管障害・脳出血、脳梗塞、小脳出血、脳腫瘍、聴神経腫瘍など)が疑われるため,本院へ緊急連絡するか,専門医の受診をお勧めします。

・東洋医学
主な原因として,体の中の「気」や「血」の不足,体の中の余分な「水」の停滞,腎の弱り,怒りや悩みのうっ積があげられます。治療:体質改善を目的に全身治療を行います。
また,めまい感がある時は,必ず頚部に異常緊張が発生します。頚~肩の緊張が増加するとめまい感が増悪することが多いです。体質改善と同時に,頚~肩の筋緊張を緩和し,左右のバランスを整えば,めまいはおさまります。

緩和のワンポイントアドバイス:
①安静・水分補給
まずは安静にしてください。(立っていると転倒する危険があるので、座るか横になってください)大切なことは、頭の位置を低くすることです。
また、脱水が原因としてめまいが起こることもありますので、適量の水分(お湯もしくは砂糖水)を摂取してください。

②環境
部屋を暗くする・音楽を消すなどして,目に入る光や耳に入る音をできるだけ減らしてください。

l  運動器・整形外科疾患
肩こり、肩以外の部位のこり、頸部痛(頚椎症、頚椎捻挫後遺症、頸背部痛)、肩関節痛(頸肩腕症候群、肩関節周囲炎(五十肩)、野球肩、胸郭出口症候群、腱板損傷、肩峰下滑液包炎)、腰痛・腰下肢痛(筋膜性腰痛、腰椎すべり症、変形性腰椎症、坐骨神経痛)、膝痛(変形性膝関節症、半月板損傷、側副靱帯損傷)、上肢痛(ばね指、手根管症候群、腱鞘炎、上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、上腕二頭筋長頭腱炎)、股関節痛、足関節痛、運動麻痺、手足のしびれ、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、各種関節炎、リウマチ、外傷(打撲、骨折、むちうち、捻挫など)の後遺症、肉離れ、筋疲労、筋肉痛

○肩関節周囲炎(五十肩)
肩関節の運動痛と夜間の痛みのことを言います。
50歳代を中心に40~60歳代の方に多くみられます 。
五十肩とは、肩周囲に構成されている組織が退行変性(老化)により炎症を起こし、痛みや動きの制限が生じている状態です。

症状: 肩関節の動きを伴う様々な動作で症状が出ます。
・関節がかたまって手が挙がらない
・安静にしていても痛い
・夜中に痛くて目が覚める
・襟足を触る動作で痛みが出現
・腰に手を回す動作で痛みが出現

東洋医学:
主な原因として、体の中の「気」や「血」の不足、腎の弱りなどによって起こるとさせています。
治療:体質改善を目的に全身治療を行います。主にお灸を使用し、体の中の陽気を高め症状の改善を図ります。

予防・緩和のワンポイントアドバイス:
痛みが強くなってしまう原因に、体の冷えがあります。セルフケアとして、痛みがある時は極力肩を動かさず、入浴の際にはゆっくりと湯船につかりましょう。
また、お腹(臍の下(丹田))と腰にホッカイロを貼るのも効果的です。カイロを貼る場所の詳細は来院時、スタッフにお気軽にご質問下さい。

○腰椎椎間板ヘルニア
重いものを持つなど腰に負担がかかることで発症し、腰痛や神経症状などを引き起こします。20~40歳の方に発症することが多いです。
症状:腰の痛みと神経が圧迫されることにより足やお尻周辺にしびれ、痛み、運動障害など神経症状が現れることもあります。
他にも、排便や排尿に関連した神経が腰椎椎間板ヘルニアの影響を受けると、便や尿が出にくくなることがあります。

・東洋医学
主な原因として、寒さや体の中の余分な「水」によって「気」や「血」の流れが悪くなる、腎の弱りなどによって発症する。
治療: 体質改善を目的に全身治療を行います。主にお灸を使用し、体の中の陽気を高め、症状の改善を図ります。

※腰痛のレッドフラッグ(重症のサインとなる症状)
・発症年齢が20才未満 or 55才以上
⇒成長期の腰痛の中には早期発見で治療が変わる疾患があります(分離症など)。
高齢者の腰痛もそれまでの持病やリスク増大によって悪性腫瘍・病的骨折など危険な腰痛の割合が増えます。

・安静で軽快しない痛み(進行性の絶え間ない痛み(夜間痛、楽な姿勢がない、動作と無関係))
⇒感染症などによる炎症を疑う必要があります。

・胸背部痛
⇒腰痛は心筋梗塞でも発症します。「いつもと違う腰痛」がポイントです。

・激しい外傷歴
⇒骨折している可能性があります。

・原因不明の体重減少
⇒悪性腫瘍など内臓疾患による腰痛の可能性があります。

・発熱
⇒化膿性椎間板炎など細菌感染症の可能性があります。

・長期間のステロイド使用
⇒ステロイドの長期服用は骨粗鬆症の原因になります。

・悪性腫瘍の既往
⇒癌の脊椎転移の可能性があります。

・免疫抑制剤の使用、HIV感染症
⇒腰椎の圧迫骨折、感染症のリスクを高める要因になります。

・神経学的異常

・全般的な体調不良

・腰部の強い屈曲制限の持続
⇒強直性脊椎炎などを鑑別する必要があります。

・脊椎叩打痛
⇒骨折している可能性があります。

・身体の変形
⇒脊椎の側湾変形があると姿勢がおかしくなり、若い女性で左右の肩の高さが違う場合、検査をおすすめします。

・膀胱直腸障害とサドル麻痺
⇒椎間板ヘルニアなど神経根症の重症例で不可逆性の神経障害が起こっている可能性があり緊急手術が必要になることがあります。

以上に該当する場合は、医療機関の受診をお勧めします。

○腰部脊柱管狭窄症
脊柱管がさまざまな原因によって狭くなることによって起こります。脊柱管の中を通る脊髄や神経が圧迫されると手や足の痛み、しびれ、歩行障害、排尿障害などの症状を引き起こします。
脊柱管狭窄症は脊柱が狭窄している部位によって診断名が異なります。もっとも多い狭窄部位は腰部で、坐骨神経痛の一般的な原因としても知られています。腰部脊柱管狭窄症では歩き続けると症状が強くなり、休むとまた歩けるようになる間欠性跛行(かんけつせいはこう)が特徴的な症状として現れます。

・東洋医学
主に陰虚が原因となることが多いです。また、腎の弱り、肝血の不足が原因とも考えられています。

○変形性膝関節症
女性の発症が多いです。
体重(肥満)や加齢などの影響で膝の軟骨がすり減り、膝に強い痛みを生じる病気です。

・東洋医学
主に4つの分類に分け治療します。
①痛みの場所が移動し、定まらないもの
②常に同じ場所に痛みがあり、温めると痛みが軽くなり、冷えると痛みが強くなるもの
③常に同じ場所に痛みがあり、重だるい痛みを自覚するもの
④痛みがある部位に熱感・発赤・腫脹があり、冷やすと痛みが軽くなるもの
治療:鍼灸治療では骨の変形を治すという目的ではなく、全身治療により痛みを徐々に減らしていくことを目的とします。

予防・緩和のワンポイントアドバイス:
膝への負担を減らすため、体重をコントロールしましょう。

○ 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
肘の外側に痛みが現れる疾患で、ものを持ち上げたり、手をひねったりする動作を繰り返すことで発症します。また、テニス選手において発症が多いことから、別名「テニス肘」とも呼ばれています。
症状は、ものをつかんで持ち上げる、タオルや雑巾を絞る、といった動作に伴って肘の外側に痛みが生じます。

・東洋医学
体の中の「気」や「血」の不足、「血」や「水」の停滞などさまざまな原因があります。
治療:鍼灸治療では、痛みの改善に効果的です。また、上腕骨外側上顆炎は一度治っても再発を繰り返す方が多いため、症状改善後も再発予防を目的に治療を継続されている方も多いです。

 

 

l  呼吸器疾患
気管支炎、気管支喘息、咳嗽、風邪、風邪の予防

○気管支喘息
発作性に、呼吸困難、喘鳴、咳などの呼吸器症状をきたす疾患です。

・東洋医学
東洋医学では、気管支喘息を「哮喘」と称されます。
主な原因としては、風寒や風熱の邪、脾の運化機能の失調、腎の弱り、陰虚火盛があげられます。
治療:気管支喘息は、呼吸の中でも、「吸」動作時にたくさんの空気を吸うことができなくなり、呼吸が浅くなってしまいます。
鍼灸治療の主な目的としては、全身治療により浅くなってしまった「吸」動作を、正常な呼吸のリズム・深さに整えます。

予防・緩和のワンポイントアドバイス:

体を冷やさないことが予防・緩和につながります。
また、呼吸が乱れている時は交感神経が優位になっています。そんな時は、リラックスするために深呼吸や白湯を飲んでみましょう。

 

 

l  代謝内分泌系疾患
糖尿病、痛風、脚気、バセドウ病、貧血

○糖尿病
血糖値が慢性的に高くなる病気です。
糖尿病ではインスリンの分泌量が減少したり、インスリンのはたらきが弱くなったりするため、血糖値が高い状態が続くようになります。重症化すると網膜症・腎不全・末梢神経障害などQOL(生活の質)を大きく低減させるような合併症や、心筋梗塞や脳梗塞などの病気を引き起こすことがあります。
症状は、喉の渇き、尿量の増加、倦怠感、体重減少などが現れるケースもありますが、多くは自覚症状がないとされています。

・東洋医学
糖尿病は東洋医学で、「消渇」という別名があり、以下の3種類の病態に分け治療を行います。
①上消:自然環境や気象の変化により起こり、口渇、多飲を主症状とします。
②中消:脂っこいものや甘いものなどの多食により起こるとされ、主症状は多食です。
③下消:虚弱な体質や、ストレスなどにより起こり、多尿を主症状とします。

治療:上記の3種類の病態に合わせて治療を行います。また、体質を改善する目的で全身的な治療を行います。
血糖コントロールには薬物療法が必要な場合も多いため、基本的には鍼灸治療と投薬の併用が望ましいです。

予防・緩和のワンポイントアドバイス:
運動がポイントとなります。特にウォーキングが勧められ、万歩計などを用いて1日1万歩程度を目標に行いましょう。ただし、血糖コントロールが悪い場合やら合併症がある場合には注意が必要です。主治医・専門医の指導を仰ぐようにしてください。

 

l  生殖泌尿器系疾患
膀胱炎、尿道炎、性機能障害、尿閉、前立腺炎、前立腺肥大、夜間排尿、インポテンツ、尿失禁症、排尿痛、頻尿

○排尿障害
正常の排尿状態を維持できなくなった状態を指し、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫、尿失禁、排尿困難、尿閉等が含まれます。
定義として、頻尿は1日8回以上、夜間頻尿は1日2回以上とされています。

・東洋医学
排尿障害は、腎の問題と捉えられることが多いです。腎の働きのひとつである、膀胱の気化・固摂作用の失調が原因とされています。
治療:灸を中心とした全身治療を行います。

予防・緩和のワンポイントアドバイス:
①身体(特に腹・腰~下半身)を冷やさないように気をつけましょう
②アルコール類やカフェイン類の過度な摂取は控えましょう
(前立腺肥大症の場合、アルコール類の多量摂取は病状を悪化させることがあります)
③規則的な生活を心がけましょう

 

l  耳鼻咽喉科系疾患
中耳炎、耳鳴り、突発性難聴、耳閉感、メニエール病、鼻出血、鼻炎、鼻閉、花粉症、蓄膿、咽喉頭炎、扁桃炎、口渇症、口苦、口腔乾燥

○耳鳴り
耳鳴りとは、「外界からの音刺激なくして自覚的に感ぜられる一切の音感覚」をいいます。耳鳴りに伴いめまいがある場合は、めまいの原因を明らかにするに必要があるため、専門医への受診をお勧めします。

・東洋医学
主な原因としては、体の中の「気」や「血」の不足、体の中の余分な「水」、腎の弱り、怒りや悩みのうっ積があげられます。
治療:体質改善を目的に全身治療を行います。また耳鳴りを有する場合、耳の周囲に圧痛・硬結点がみられ、首~肩の筋肉が緊張していることが多いです。反応が見られる場合には、上記の部位に対しての治療も行なっていきます。

○メニエール病
突発的に回転性めまい発作をきたすと同時に、難聴、耳鳴り、耳閉塞感などの蝸牛症状と悪心・嘔吐などの自律神経症状を伴います。症状出現は、一般に特別な誘因もなく起こり、悪心・嘔吐を伴い、数分~数時間持続します。

・東洋医学
主な原因として、体の中の「気」や「血」の不足、体の中の余分な「水」、腎の弱り、怒りや悩みのうっ積があげられます。
治療:体質改善を目的に全身治療を行います。
また耳鳴り同様、めまいを有する場合には首~肩にかけて筋肉の緊張がみられることが多いです。緊張が見られる場合には、首~肩に対しての治療も行なっていきます。

 

l  眼科系疾患
眼精疲労、仮性近視、ドライアイ、アレルギー性結膜炎、ものもらい

○眼精疲労
眼を使う作業を続けることにより眼が疲れて、視力の低下や眼痛、頭痛、肩こりなどを訴え、時には悪心・嘔吐が生じるような状態です。普通では疲労しない程度の作業でも眼が疲れるものや、休息してもなかなか回復しないもの、また回復してもすぐ疲れが出るものと様々な症状を伴うものをいいます。

・東洋医学
主な原因は、肝と腎の失調です。さらに、眼精疲労は眼の酷使によるものなので体の中の「血」が不足する状態になります。
治療:上記の病態に合わせて、「血」を補うといった治療を全身に行います。また必要に応じて、眼の周囲、頭痛、肩こりに対してもアプローチを行います。

予防・緩和のワンポイントアドバイス:
蒸しタオルやホットアイマスクなどで眼を温めましょう。温めることで血行が良くなり、筋肉の緊張がほぐれ、リラックスできます。
また、眼を酷使すると、眼に通常より多くの血液が送り込まれ、眼の血管が拡張し、充血や痛みなどが起こることもあります。その場合は冷たい水でしぼったタオルなどをのせると症状が緩和されます。

 

小児科系疾患
小児神経症(夜泣き、疳の虫、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠など)、小児喘息、アレルギー性湿疹、耳下腺炎、夜尿症、虚弱体質の改善、チック、発達障害、自閉症、小児麻痺

○小児喘息
発作性に、呼吸困難、喘鳴、咳などの呼吸器症状をきたす疾患です。
小児喘息でも喘息発作を繰り返します。乳幼児は大人と違い言葉で症状を伝えることができないため、泣いたり、ぐずったりと不機嫌になることで喘息発作を訴えることがあります。軽い咳でも、喘息が疑われる場合もあるので注意が必要です。

・東洋医学
主な原因として、「水」と「気」の異常があげられます。体の中にある余分な「水」、ストレスなどで流れが悪くなってしまった「気」の調節が必要です。
治療:お灸や小児鍼を使用し、体質改善と体の中の巡りをよくする治療を行います。小児鍼は体の中に鍼を入れず、体表・皮膚を摩るようにする治療です。

予防・緩和のワンポイントアドバイス:
小児の疾患では、ご家族に協力していただきご家庭内の環境を整えてあげることが大切です。
そのひとつに、室内のアレルゲン(喘息の発作を起こす物質で室内のダニ、ホコリなど)への対策が重要です。以下にまとめました。

①寝具:布団は両面とも干しましょう。また、干す時間帯も大切です。日中、陽が上ってから落ちる前までに干すようにしてください。
②掃除:必ず窓を開け、お子さんがいないときにしましょう。

 

○夜尿症
夜尿症は、5歳を過ぎても夜間睡眠中に遺尿を認めるものをいいます。

・東洋医学
主に、腎の弱り、「気」の不足が原因にあります。生まれながらに腎が弱い子に対し、元気を補ってあげる治療、ストレスなどで流れが悪くなってしまった「気」を調節する治療を行います。
治療:小児喘息同様、お灸や小児鍼を用いて全身治療を行います。

予防・緩和のワンポイントアドバイス:
○生活指導
・規則正しい生活を送る
・夕食時の飲水量や塩分制限および蛋白摂取制限などを行う
・子供に対して、「怒らない」「焦らせない」「起こさない」
・子供の話をよく聞いてあげ、心の支えになってあげる
・子供が得意なことで自信を持たせてあげる

l  精神科系疾患
不眠症、うつ病、適応障害、倦怠感、自律神経失調症、パニック障害、ノイローゼ・ヒステリー、神経症

○不眠症
不眠症は、「個人にとって必要な睡眠量の不足」、「日常、習慣的にとる睡眠後の朝に睡眠充足感がない」のいずれかに該当するものをいいます。すなわち、翌朝に睡眠に対して充足感がなく、患者自身がそのために身体的、精神的、社会生活上に支障がある場合を不眠症と考えた方がいいです。現代社会では、国民の5人に1人は睡眠の問題に悩んでおり、持続性の不眠症に悩んでいる人は人口の10%以上であり、さらに約3%が習慣的に睡眠薬を服用しています。

・東洋医学
不眠は、陰と陽の相対的なバランスが崩れたときに発症すると考えまれます。陰陽の関係は、昼間が陽、夜間は陰が旺盛と言われています。しかし夜間に何らかの原因により、陽が旺盛になった結果、不眠症が生じると考えられます。
治療:全身治療により、不安や緊張を軽減し、気持ちを安定させる治療を行います。

予防・緩和のワンポイントアドバイス:
就寝前のアルコール、タバコ、カフェイン摂取を控えてください。また、テレビを見る、読書をする、過度な昼寝をしてしまう方は夜間に脳が活発に動いてしまうため改善が必要です。

○うつ病
現代、コロナウイルスの影響やストレス社会により、うつ病を有する人は年々増加の傾向を示しています。
うつ病は、気分の沈滞や気力の減退などの精神症状に加え、食欲低下、不眠、疲労感などの身体症状を伴う心の病です。
主な精神症状は、気分の障害、意欲の障害、思考の障害などがあります。また身体症状は、睡眠障害、疲労倦怠感、頸や肩凝り、頭痛、食欲不振などです。
上記の症状は1日の中で、朝方に強く、夕方には軽減する経過をたどります。

・東洋医学
主な原因として、精神的な緊張・情緒の過度の変動(イライラや怒りなど)による肝鬱気滞、思い悩むや心労や長期にわたっての精神的な緊張・情緒の過度の変動による心・脾・肝・腎の失調などがあげられます。
治療: まずは身体症状の緩和を目的に全身治療を行なっていきます。
鍼灸治療単独で適応となるのは、通常の憂鬱や日常生活に支障のない軽症のうつ状態です。日常生活に支障のある場合には、専門医による治療と鍼灸治療を併用するとよいでしょう。

緩和のワンポイントアドバイス:
「がんばらなくてはならない」「自分は怠けているに違いない」「早く治さないといけない」そう思っていませんか?
まずは症状のある時は、休養を取り、原因となったストレスを回避してみましょう。

 

l  婦人科系疾患
月経困難症、月経異常、月経不順、更年期障害、乳汁分泌不足、生理痛、冷え症、子宮筋腫、子宮内膜症、妊娠中のケア、不妊症(男性不妊症、女性不妊症、機能性不妊症、原発性不妊症、子宮性不妊症、卵管性不妊症、卵巣性不妊症)、つわり、逆子、子宮脱

○月経周期の異常
月経周期は、周期日数が25~38日、変動は6日以内が正常です。また、月経持続日数は3~7日が正常とされています。24日以内の周期で発来した月経を頻発月経、39日以上の周期で発来した月経を希発月経といいます。また、出血が2日以内の場合を過短月経、8日以上続く場合を過長月経といいます。
月経周期の異常は内分泌機能異常(無排卵周期症、黄体機能不全症など)によって起こることが多いですが、月経の持続や出血量の異常は器質的原因によることが少なくありません。

・東洋医学
無月経を「経閉」といい、腎の弱り(腰背がだるくて痛む、手足が温まらない、頭のふらつき、耳鳴りなど)、体の中の「気」や「血」の不足(頭のふらつき、動悸、食欲不振、軟便、手足のむくみ、元気が出ない、無力感など)、ストレスなどで「気」や「血」の流れが悪くなる(下腹部が張って痛む、抑うつ感、胸が苦しい、脇痛、イライラ、怒りっぽいなど)、体の中の余分な「水」の停滞(腰がだるい、むくみ、多量のおりもの、胸が苦しい、悪心、動悸、息切れ、味がない、倦怠無力感、顔色が白いなど)が原因としてあげられます。

頻発月経は経行先期といい、希発月経を経行後期といいます。
前者は、血熱(月経量が多い、口乾、冷たいものを好む、便秘、尿が濃いなど)、肝鬱(経血量が一定しない、血塊、乳房痛や脇痛、抑うつ感、怒りっぽい、口が苦い、喉の渇きなど)、体の中の「気」の不足(経血量が多い、経血が希薄で淡色、腰部が張る、元気がない、手足がだるい、動悸、息切れ、食欲不振、泥便など)、体の中の「血」の不足(経血量が少ない、経血が紅色、頭のふらつき、腰がだるい、手足のほてり、頬の紅潮など)があります。
後者は、寒凝(経血量は少ない、下腹部に痛み、温めると下腹部の痛みが軽減、下腹部を触るとかえって痛みが増悪するなど)、気鬱(下腹部に張った痛み、胸脇部や乳房が張るなど)、体の中の「気」の不足(経血量は少ない、下腹部に疼痛、温めると下腹部の痛みが軽減、下腹部を触ると痛みが軽減、息切れ、腰のだるさ、手足の冷えなど)、体の中の「血」の不足(経血量が少なく淡紅色、腹痛はない、ふらつき、動悸、皮膚の乾燥など)があります。

月経不順は、経行先後無定期(経乱)といい、肝鬱(乳房の張った痛み、胸脇部の張った痛み、抑うつ感、ため息など)、腎の弱り(経血量は少ない、耳鳴、頭のふらつき、腰のだるさなど)によって起こります。

治療:体質改善を目的に全身治療を行います。
また治療に伴い、基礎体温表の記入を行っていただきます。
鍼灸治療において、無月経では続発性無月経(心因性、環境性無月経)や視床下部、下垂体、卵巣、子宮の機能的な失調によるものが対象となりますが、原発性無月経は不適になります。また、希発月経、頻発月経および無排卵周期症は対象となりますが、器質的疾患(炎症や腫瘍)に起因するものは不適となります。
専門医への受診と並行に鍼灸治療を受けられることをおすすめします。

○更年期障害
更年期(45~55歳)に現れる多種多様の症候群で、器質的変化に相応しない自律神経失調症を中心とした不定愁訴を主訴とする症候群です。発症は、①卵巣機能の低下、②社会・文化的な環境因子、③性格構造に基づく精神・心理的な要因、といった3つの要因の関与によって起こります。
症状は、ほてり、冷え症、のぼせ、心悸亢進、抑うつ気分、気分低下、イライラ、不安感などです。

・東洋医学
主な原因として、肝・脾・腎の失調により起こります。
治療:上記の失調に対し、足の三陰経脈を中心に治療していきます。腎経は、のぼせ、動悸、冷え、不眠症、泌尿・生殖器系の問題に対応しています。肝経は、泌尿・生殖器(特に婦人の生殖器)に、脾経は消化器系および生殖器に対応しています。
また、任脈、督脈、衝脈の三奇経脈も産婦人科疾患の治療の際には重要です。
当院では、体質改善を目的に全身治療を行なっていきます。

○冷え症
冷え症は、「その人の身体内部で自覚する不快な冷感」のことをいいます。また、身体の他の部分が冷たく感じないような温度で、身体の特定部位のみが特に冷たく感じる場合も冷え症といえます。日本において、冷えを訴えるのは男性よりも女性の方が多いと言われています。手部、腹部、腰から下、大腿部から下、膝から下、靴下を履く範囲、足の指先と冷えを訴える範囲は人それぞれです。

・東洋医学
主な原因として、寒湿の外邪、生もの・冷たいものの偏食、体の中の「気」の不足、外傷などがあげられます。

治療:局所の循環改善と自律神経機能の改善(副交感神経を亢進させ、交感神経を緩和し、血管拡張を促す)を目的に治療を行います。また体の中の余分な「水」を取り除き、陽気をめぐらせ、腎の働きを高める全身治療を行なっていきます。

○不妊症
不妊は、「妊娠を希望して、避妊等をしないで2年以上妊娠できなかった場合」のことを言います。何か器質的な問題で妊娠できない場合には、2年という年齢に関係なく不妊です。日本における因子別不妊症の原因をみると、夫婦においては男子不妊症が約30%、女性因子が70%とされています。このうち女性因子として30~40%が卵管因子、10~20%が排卵因子、約10%に頸管因子と子宮因子とされています。

・東洋医学
主な原因として、腎の弱り(女性の月経に関しても子供を産むことに関しても、1番の大本になっているのが腎のパワーです。そのため、不妊の原因分類の1番にこの腎の弱りがあげられます)、肝鬱(イライラやストレスが溜まっている状態)、体の中の「血」の不足、体の中にある余分な「水」の停滞(肥満傾向な方)、体の中の「血」の停滞(慢性的な下腹部の血流の悪さによって起こり、冷え症、月経通が強いなど、子宮内膜症が疑われ、無排卵や卵巣機能不全などがあります)があげられます。

治療: 体質改善を目的に全身治療を行います。
また治療に伴い、基礎体温表の記入を行っていただきます。

専門医への受診と並行に鍼灸治療を受けられることをおすすめします。

近年日本では、男性不妊症も増加しています。
男性不妊症には、以下のようなものがあります。
・乏精子症 :精子の数が著しく少ない
・無精子症 :精液中に精子が見当たらない
・精子無力症 :精子の運動率が低い
・奇形精子症 :精子の奇形率が高い(正常な形態の精子が少ない)

東洋医学の観点から男性不妊症の原因をみると、腎の弱りが多く挙げられます。
腎の状態は精子の数や運動率、形態に大きく影響しています。よって、腎の状態がよければ、精子の状態もよくなります。
腎の機能は年齢とともに弱まり、精子も同様です。精子に異常があると、受精卵ができて妊娠しても、その後成長し続けることができずに成長が止まり、流産となります(不育症)。腎の状態を高めておくことは、これらの予防にも有効です。
また、ストレスも男性不妊と関係があります。「肝鬱気滞」という体質になります。仕事よる疲労やストレスの蓄積、不規則な生活、家族や周囲からのプレッシャーなどが継続、繰り返すことにより「気」の流れが悪くなりこのような体質になってしまいます。

 

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健康管理、冷え症、皮膚病、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、蕁麻疹、慢性疲労、歯痛、顎関節症、梅核気、発汗異常、線維筋痛症、術後疼痛

上記疾患のうち、神経痛・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腰痛は鍼灸の保険適用が認められています。